バナナの皮は滑りやすい

思ったことを書くだけの日記

食事に敬意を払う、が お前は駄目だ

 

どうも、バナナの皮です。

 

私 好き嫌い多いんですが、食べ物は基本的に残さない主義で

例え嫌いな食材が目の前に現れようとも提供された食事は必ず食べきるようにしてる。

 

必ずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

で、本題の前に

 

私はレバーが食べれない。

 

好きな人には申し訳ないが心底嫌いである。

生なら大丈夫とかそうゆう問題じゃない。生でもレバーはレバーだ。

美味しいレバーを食べてないから、とほざく友達や知り合いもいるが

レバーに美味しいと美味しくないの区別は私には無い。

 

 

ただ、レバーなぞ頼みでもしない限り口にすることは無い為、油断していた部分もあった。

 

 

 

 

 

 

 

先日のことだ、とある洋食屋に食事に行った。

強面おじいが一人で仕込み調理をしてる小さなお店だ。

私は海老フライセットを頼んだ。

 

大きなエビにサクサク衣

おじいの特製ソースをつけて食べる。

 

美味しい。

 

 

 

食事は美味しくてなんぼだ。

 

プリプリの海老に舌づつみを打ちながら軽快に食べすすめていく。箸が止まらない。

 

 

 

そして、もうそろそろ食べ終わる頃

 

強面おじいが急ぎ足で私の元へ来た

何か片手に持っている

 

 

 

 

 

「姉ちゃんいつも食うの早いねん」

 

 

 

と、乱雑に皿に置かれたフライを私に手渡した。

 

 

 

 

「これサービスやから、よかったら食うてや」

 

 

 

 

「え、ありがとー!」

 

 

 

予期せぬ優しさは最高に好きだ。

 

 

 

強面おじいの優しさに頬も涙腺も緩んだ。

 

 

おじいの表情も少し柔らかいように感じる。

 

 

 

 

 

 

さて問題はこのフライだ。

 

 

 

 

「おじい、これなんのフライ?」

 

 

 

 

 

「鶏レバーのフライや」

 

 

 

 

 

鶏レバー

 

 

 

 

 

 

藤原竜也が唸っている映像が脳裏に流れた。

 

 

 

 

なんでレバーチョイスやねん

 

 

 

本音が喉元まで来ていたがグッと堪えた。

 

 

 

そんな中、強面おじいは「ゆっくり食べや」と呟き、そそくさと厨房に戻り仕込みを始めた。機嫌がいいのか鼻歌を歌いだした。

 

 

 

私は悩んだ。

この大きさのまばらな3切れの鶏レバー達。

 

 

 

 

 

一瞬、鞄に入れてしまおうかと思った。

 

 

 

 

 

いやだめだ、そんなことしたら間違いなく食べない。

 

あとで食べるなど出来やしない。

相手は強敵レバーである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食べよう

 

 

 

 

 

 

 

私は腹をくくった。

おじいの不器用な優しさを無碍になどできない。レバーチョイスしたことにはカナリの恨みを持ったがおじいは悪くない。

 

 

まず私は一番デカイ鶏レバーを箸につまんだ。

 

 

 

 

 

 

おじいの鼻歌が耳に響く。

 

 

 

鶏レバーと私の勝負。

負けるわけには行かない。

ここまで来たら意地である。

 

 

 

私はレバーを口に放り込んだ。

 

もしかしたら美味しいと思える歳になったかもしれない、むしろそうであれ私

 

 

思い込みは大事だ。美味しいと思えばなんでも美味しくなると婆ちゃんが言ってた。

 

言ってないけど。

 

 

 

 

そして私はレバーフライを齧った。

 

 

 

 

 

 

(シャリッ)

 

 

 

 

 

 

 

想定外の事態が私を襲う。

 

 

 

 

レ バ ー が 半 凍 り だ 。

 

 

 

 

 

 

私の食べるペースが早かったため、おじいは急いで私の元へ持ってきた。

そう、急いでたが故、中まで温まりきっていなかったのだ。

 

 

 

 

だが、いい大人が一度口に入れたものを出すなどもってのほかである。

 

私はレバーをそれ以上齧れなかった。

 

 

 

 

レバー独特の香りが鼻を通る

 

 

 

私は小さく「ウグッ」と嗚咽を吐いた。

 

吐き気を催した時、口が膨らむ現象に名前は存在するのだろうか。そんなことを考えながら私はレバーを飲み込んだ。

 

余りの苦しさに涙が出てきたがオジイに気付かれぬよう顔を下に向けた。

 

 

 

あと2切。

私は涙をこぼしながら間隔おきに飲み込んだ。

 

齧ることを諦めたのだ。

 

 

おじいに悟られぬよう私は美味しい顔をしながらレバーフライを放り込んでいく。

瞳は涙で濡れている。

お解りかと思うが美味しくて泣いているわけではない。苦しくて泣いている。

 

優しさで緩んだ涙腺は若干の恨みも含んだ悔し涙に変わっていた。

 

 

 

 

 

無事食べ終え、涙を拭い私は精算した。

 

 

 

 

「(海老フライ)今日も美味しかった!」

 

「いつもありがとうな」

 

「またくるね、オマケもありがと」

 

 

 

 

おじいは嬉しそうに笑った。

 

 

 

この純粋無垢な笑顔に苦しく残酷な勝負の意味を得た。

 

あの苦しさは

 

 おじいの笑顔を見る為だと。

 

 

 

 

 

と、店の仕込みでレバーの掃除をしながら改めて思った昨日の夕方。